児童虐待を早期に発見し,防止するための日本法医病理学会の声明
2020/05/01
全国に拡大された政府の緊急事態宣言を受け,新型コロナウィルスの感染防止策としてさらなる外出自粛,休業要請,学校の臨時休校が実施されています。結果として,普段よりも家庭で親子が長時間ともに過ごすことになり,親子の絆を深める好機となる一方で,親としては先の見えない新型コロナウィルス感染症に基づく健康面,経済面,児童の教育面での不安などからストレスがたまりやすく,児童虐待やドメスティック・バイオレンス(DV)の件数が増加することが懸念されています。さらに,ステイ・ホームの徹底により周囲環境への関心のさらなる希薄化や臨時休校によって虐待の認知や通報が遅れることも容易に予想されます。
内閣府は自治体が行っているDV被害者の相談業務や一時保護を民間の団体にも委託し,態勢を拡充することとしています。また,厚生労働省は,学校に対して,休校期間中に設けられた登校日に子供から聞き取りを行ったり,子供に配布したタブレット端末等を通じて状況を確認したりするように求めています。
昨年の第2回日本法医病理学会学術全国集会において「児童虐待を考える」と題して開催されたシンポジウムでも再認識されたように,児童虐待を早期に発見し,防止するためには児童相談所,警察などの関係機関,各診療分野とのわれわれ法医病理学(法医学)との密な連携が最重要です。日頃から虐待被害児,DV被害者の生体鑑定(診察)に携わっておられる会員各位におかれましては,今後さらに関係機関・診療科との連携を深めていただきますよう,お願い申し上げます。
2020年5月1日
日本法医病理学会
